Department of Physics

 

東京工業大学大学院総合理工学研究科 材料物理科学専攻

 

山本研究室

 

 

物性物理学専攻、統計固体物理学講座

http://wwwsurf.phys.titech.ac.jp/tylab/


山本 直紀 助教授

 

 透過型電子顕微鏡(TEM)と走査型トンネル顕微鏡(STM)の発展により現在では固体構造および表面構造の原子スケールでの直接観察が可能となっている。本研究室では、TEMSTMがもつ小さなプローブ径の電子ビームを利用し、入射位置から放射される光を測定することで局所的な物性を調べ、ナノ構造のもつ固有の新物性を探索している。人工的に作られた半導体の量子構造や、金属、半導体の表面に形成される表面ナノ構造が示す光学的性質を調べることが現在の研究テーマである。これらの構造には量子サイズ効果による電子状態変化や光物性変化など、ナノスケールにすることではじめて生じる電子系の新物性が現れる。最近、ナノ構造を超高真空中で種々の方法により作製し、測定する装置の製作を行っている。また、フォトニック結晶中の光やプラズモニック結晶の表面プラズモンの性質を、電子線励起発光顕微法を用いて調べる研究を行っている。

半導体量子構造の光物性の研究
 半導体のサイズが小さくなると電子準位がとびとびになる量子効果が顕著になる。そのため、半導体が量子井戸、量子細線、量子ドットといった量子構造を持つと発光のエネルギーや偏光特性がサイズや形状で変わり、電気的および光学的性質に特有の性質が現れる。ナノ構造が密集していると巨視的な測定法では新規な物性は平均化され隠されてしまう。本研究室では、局所からの発光を検出する手法として透過型電子顕微鏡を使ったカソードルミネッセンス(CL)法を用いて、高密度に分布したサイズの異なる量子構造を個別に調べる研究を行っている.。図1に、(a) InP量子細線(ナノワイヤ)構造のSEM像と(b)GaAs結晶中のInAs量子ドットのTEM像を示す。ナノワイヤ1本1本の発光スペクトルを測定すると異なる波長にピークが現れ、発光がワイヤ方向に強く偏光していることが観測される。 

 

  

図1 (a) InPナノワイヤのSEM像と(b) InAs量子ドットのTEM

                                          

半電子線励起発光顕微法によるプラズモニック結晶の研究
 電子が物質に入射すると可視光の波長領域ではチェレンコフ放射や遷移放射といった光が放出される。これらは入射電子と物質中の電子系との相互作用によって生じる放射現象で、その放射スペクトルは物質の誘電率に依存する。特に金属では表面のプラズマ振動(表面プラズモン)による放射が起こり、0.1μmオーダーの大きさの金属微粒子からはプラズマ振動の多重極モードの放射が観測される。様々なナノ構造を作製し表面に励起されるプラズモンが起こす放射の性質について調べている。図2は、ポリスチレン球をベースに作製した銀の微粒子の2次元配列構造である。発光スペクトルには多数のピークが現れ、ピーク強度は電子ビーム照射位置で激しく変化する。その様子はピーク波長で測定したフォトンマップ(図2下図)に現れており、このパターンは表面プラズモンの定在波モードの空間分布を表している。この測定からプラズモニック結晶における表面プラズモンのバンド構造を調べている。

 

    

図2 銀微粒子配列(粒径500nm)とピーク波長のフォトンマップ


走査型トンネル顕微鏡(STM)による表面光物性の研究
 表面には固体内部と違った表面特有の構造が現れる。それに伴い表面のさまざまな物性も固体と違ったものになると考えられる。表面構造を原子レベルで調べる装置に走査型トンネル顕微鏡(STM)があるが、最近この装置に光を検出する装置を組み合わせて試料からの発光を調べることができるようになった。トンネル電流が流れる微小領域からの発光を測定し、表面モルフォロジーに加えて物性に関する情報を同時に得ることができる。発光スペクトルや発光の空間分布から表面特有の物性や、金属・半導体表面で起こる特有な発光現象を研究している。図3は、超高真空STM内で測定したSi(111) 7x7表面構造のフォトンマップで、アドアトムの位置が明るいコントラストを生じている。このような表面にナノ構造が形成されたときの光学的性質の変化をSTM発光から直接調べようと試みている。

図3 Si(111) 7x7表面構造のフォトンマップ(Vs =2.7V, It=2.5nA